『我々は不確かなものを求める間、確かなものを失う。』 -ラテン語の格言-
気心知れた部下達を率い、雲のように気ままな旅を続ける琉球の海賊マキシ。既にアジアの海をあらかた巡り終えた彼は、新天地を求めて西へ向かっていた。ヨーロッパを目指して南航路を進み、インドの港街にたどり着いた時、彼はソウルエッジを探して旅をしていたキリクと出会う。
だが、それは決して喜ばしい出会いではなかった。
キリクが内に秘めていた邪気。それに導かれて現れた異形の群れとの戦いで、マキシの部下達はなす術もなくその命を失う。やがて異形の群れが去った時、かろうじて生きていたのはキリクとマキシだけだった。
仲間達の復讐を誓ったマキシは、この事件以降キリクとともに行動する。異形の群れを率いていたアスタロスは、いつか再びキリクのもとに現れるに違いなかった。
旅の途中でシャンファを仲間に加え、彼らは一路ヨーロッパを目指した。慣れない陸の旅を通じ、彼と新たな仲間達の絆は深まっていった。
やがて彼らは邪剣ソウルエッジを持つナイトメアの居城へと侵入、ナイトメアの配下達の襲撃を受ける。忘れもしない異形の群れ…!
目指す敵が近くにいると確信した彼に答えるかの如く現れる巨大な影。
仲間達を先に行かせ、マキシはアスタロスと対峙する。部下達の恨みを晴らすべく、彼は渾身の力を込めてアスタロスに挑み、ついに深手を負いながらも勝利を収めたのだ。しかしその直後、アスタロスを加護していたアレス神の手で地中へと飲み込まれたマキシは、意識を失ったまま地下深くを流れる水脈へと落ち、静かに冷水の中を流されていった。地上にはただ、彼のヌンチャクが残されていた。
気が付いたとき、マキシは岸辺に打ち上げられていた。戦いで傷ついた手足の感覚は無く、ただ意識だけがしっかりとしていた。彼は最早自分が満足に動けないほどの重症を追ったのを理解した。
やがて近くの村の者に助けられたマキシは、その村で暮らし始める。持ち前の知識と義理堅い性格、そして人をひきつける魅力は、彼を村の一員としてくれた。やがて体力は戻ってきたが、傷ついた四肢が治る見込みはなく、以前のように旅をする生活には戻れそうになかった。
だが、彼は満足していた。皆の仇は討てたのだから。キリク達がその後どうなったのか、それは気になっていたが今の平和な生活が続く以上、彼らはうまく災いの元を断ったのだと思われた。
このままこの村で一生を終えるのも悪くはない…。そう思っていた。
四年が過ぎたころ、ある噂が村へと届いた。
「大きな斧を持った 大きな男が通る 後には何も残らない」
マキシは直感した。奴だ…! 詳しく話を聞けば聞くほど、直感は確信へと変わった。
奴が生きている…。俺はこんなところで何をしているんだ? 仲間の仇も討たずに自分だけがのうのうと平和に暮らしていていいわけがない!
だが、彼の四肢は動かなかった…。
マキシの心情を読み取ったのか、村に住むまじない師の老人が彼の前に現れる。
「何かを得ようとするならば、同等の何かを手放さなければなるまいよ。」
マキシは老人の秘術にすがり、老人は取引に応じた。老人が最近手に入れたという珍しい金属片。
その貴重な品を薬として使って秘術は行われたのである。
数日の後、村人達に再会を約束するとマキシは旅立った。
彼が仇討ちのための肉体と引き換えに失ったもの…。それは仇討ちを誓った仲間と同じぐらいに大切な、旅の苦楽を共にした二人の記憶だった。