『人の子に生まれたる者、孤島にはあらざるなり。』 -ジョン・ダン「瞑想」-
ここはハイラル。神々の加護の元、平和な世界。しかしある日、その平和は突然破られた。
日照りや洪水などの災害がしばらくの間続いた後、ついには太陽が暗雲によって隠されてしまったのだ。 一連の事件は、たった一人の心を悪に乗っ取られてしまった魔法使いによって起こされた災悪だったのである。
太陽が奪われてしまったハイラルでは昼でも暗い暗雲が立ちこめ続けた。賢者達や心正しき魔法使い達は
魔法による抵抗を続けたが、事態は一向に変わらなかった。相変わらす太陽は隠れたままであり、 かの魔法使いの力の強さを思い知らされただけであった。
いつしか人々から笑顔が消え、徐々にハイラル全体から希望が失われていったのである…。
そんな日々が続き、いよいよハイラルも終わりかと誰もがあきらめかけた時、太陽は再び戻ってきた。
ゼルダ姫から直々に事件の解決を頼まれていたリンクが、冒険の末に首尾よく魔法使いを倒したのである。 しばらくぶりに太陽の光を浴び、大いに人々は喜んだ。
ハイラルに再び活気と平和が訪れたのだ、もう何も心配することはないと。
しかし、賢者達は事態を重く見ていた。太陽を盗んだ魔法使いは、以前は心正しき魔法使いの一人であったからである。
一体何が彼を変えてしまったのか。彼らの調べによって程なく黒幕が判明した。なんとそれは、ハイラルの外の世界から 伸びる魔の手だったのだ。
魂を喰らう邪剣ソウルエッジ。ハイラルとは異なる世界に存在する、握る者の心を乗っ取る恐るべき剣。
幸いなことにソウルエッジは現在は破壊されており、多くの破片となっているという。しかし不運なことに、 その破片の一つがハイラルへと紛れ込んでいたのだ。今となってはどういう経緯かはわからないが、
それを偶然手にした魔法使いは、たちまち破片が持っていた悪に乗っ取られてしまったのだろう。 そして邪剣の囁くままに太陽を盗み、ハイラルを危機に追い込んだのである。
破壊されてバラバラになっている状態ながら、簡単に人の心を悪で染めてしまう邪剣が危険な存在であることは 間違いがなかった。今回の事件を通じてソウルエッジはハイラルを知ってしまった。いずれハイラルへと
手を伸ばしてくるに違いない。
さらに深くソウルエッジについて調べるうちに賢者達は、異世界においてソウルエッジの破片が徐々に集まりつつあり、
そう遠くない未来に復活するであろうことを突き止めた。もはや一刻の猶予もならなかった。とるべき解決策はただ一つ、
邪剣が完全に復活しないうちに倒してしまうしかないのだ!
邪剣ソウルエッジの話を聞いたリンクは、静かにうなずいた。
これ以上の被害を抑えるため異世界へわたり、ソウルエッジを破壊する決心をしたのである。
ソウルエッジのことなど何も知らず、町の人々が安心して眠っている夜、彼は一人で旅支度を整えた。
マスターソード、ハイリアの盾、妖精の弓、ブーメラン、爆弾。…そしてオカリナ。 準備は万全だ。
さぁ、事の元凶を断つべく、オカリナを吹こう…!